退職金を受け取ったあと、毎月決まった額を口座から引き出していくとしたら、そのお金は何年分の暮らしを支えてくれるでしょうか。受け取る金額よりも「何年もつか」のほうが、老後の見通しには近いのかもしれません。

毎年1月に老後資金の目標額を見直すなかで、私たちもこの問いに行き当たりました。無料の計算機で試した流れと、途中で手が止まった点を順に書いていきます。

平均の退職金なら、何年分の暮らしになる?

最初は、自分たちの見込み額ではなく平均値から始めました。厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」では、大学卒の定年退職者の平均退職給付額は2,037万円で、前回(平成30年)の2,173万円から136万円減っています(e-Statの統計表)。

ここから先は、私たちが置いた仮の数字です。この2,037万円を運用せず、毎月引き出すだけとして割り算しました。

2,037万円を運用せずに取り崩した場合(税金・手数料は含めない)
毎月の取り崩し額 もつ期間の目安
10万円 約17年
15万円 約11年

月に5万円違うだけで、期間は約6年変わります。食卓で表を眺めながら、思っていたより短いというのが夫婦の正直な感想でした。

どこで、計算の手が止まった?

一つめは、平均値をそのまま使ってよいのかという点です。同じ調査では、退職給付制度がある企業の割合は74.9%で、前回の80.5%から5.6ポイント下がっています。退職金があることを前提にできない人もいます。

計算式も会社ごとに違います。三井住友銀行の解説では、基本給に支給率を掛ける方式の例として、基本給40万円×支給率45.0で1,800万円という計算が紹介されています。平均の2,037万円とは、出発点からずれることもありえます。

二つめは道具選びです。はじめに開いた金融庁の資産運用シミュレーションは、毎月の積立額・想定利回り・積立期間から将来の金額などを見る道具で、これから積み立てていく側の計算に向いています。私たちが知りたかったのは、反対の「減っていく側」でした。

三つめは、取り崩しながら運用を続けるかどうかです。「4%ルール」という考え方では、資産の4%を毎年取り崩すとして、3,000万円なら年120万円(月10万円)を約30年間取り崩せるとされます(ココザスの解説)。同じ3,000万円を月10万円で割り算だけすると約25年。この差をどう受け止めるかで、しばらく話が進みませんでした。

「何年もつか」は、どう見れば整理できる?

私たちは、割り算と計算機を役割で分けることにしました。割り算の年数は「運用しなかったら」という土台の数字として手元に残します。

運用しながら取り崩す場合は、三菱UFJアセットマネジメントの取り崩しシミュレーションを使いました。無料で登録も要らず、入力した条件からモンテカルロ法で資産の寿命を試算してくれます。

  1. 取り崩し開始年齢を入れる
  2. 退職金の見込み額と準備済みの資産を合計し、金融資産額に入れる
  3. 毎月の取り崩し額を、表と同じ10万円・15万円の2通りで入力する
  4. 想定リターンと想定リスクを低めと高めで入れ替え、結果を並べる
  5. 割り算の年数と見比べ、差の大きさを書き留める

このツールは手数料や税金を計算に含めていません。そのため私たちは、画面の年数を少し長めに出た数字として受け止めています。どの結果を目安にするかは、あなたの暮らし方しだいです。

最初に入れる数字は、どこで見つける?

平均値で試すと流れはつかめても、自分の答えにはなりません。私たちが次に確かめたのは、勤め先の退職金の計算式でした。控除額を含めた受け取り額の考え方は、控除額と1/2の式で退職金を試算した記事にまとめています。

今週のどこかで、就業規則や退職金規程を開き、計算式が書かれたページに付箋を一枚貼っておく。その一行が、計算機に入れる最初の数字になります。