毎年1月、お正月の飾りを片付け終えたころに、私たちは老後資金の目標額を見直します。今年の年始は、いつもと少し違う話になりました。「退職金と年金とNISA、ばらばらに考えていないか」と夫が言い出したのです。三つとも老後を支えるお金なのに、それぞれ別の日に、別のメモで考えていました。

この記事では、その日に私たちが食卓で並べた試算と、途中でつまずいた点、そこから整理した考え方を順にお伝えします。数字は考え方を示すための例で、あなたに同じ額を勧めるものではありません。

三つのお金を一枚に並べると、何が見えてくる?

まず、性格の違う三つのお金を「入ってくる形」で分けてみました。

老後を支える三つのお金
種類 入ってくる形 先に確かめること
年金 受給が始まると続く収入 見込み額(月額)
退職金 退職時にまとめて 勤め先の制度と見込み額
新NISA・iDeCo 自分で積み上げる 使える枠と拠出の上限

年金について、日本年金機構のページでは、令和8年度の厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)が月額237,279円、国民年金(老齢基礎年金)の満額が月額70,608円と示されています。厚生労働省が2026年1月23日に公表した改定で、前年度からそれぞれ2.0%、1.9%引き上げられた額です。

私たちは、どんな数字で試算した?

ここからは仮に置いた数字で進めます。老後の生活費を月30万円、年金を先ほどの標準的な額とし、25年間を見通すことにしました。

年金と生活費の差(仮の数字)
項目 金額
年金の年額 2,847,348円
生活費との差(月額) 62,721円
差の25年分 18,816,300円

次に、自分で積み上げる側です。新NISAで月3万円を20年続けると、元本は7,200,000円。iDeCoを企業年金のない会社員の上限である月2.3万円で20年続けると、元本は5,520,000円です。運用益は入れず、元本だけで並べました。

二つを合わせても、25年分の差にはまだ6,096,300円届きません。この残りを退職金とどう組み合わせるかが、その日の食卓での次の話題になりました。

どこで、私たちはつまずいた?

月額と年額を混ぜていた

最初の試算では、年金を月額、生活費を年額で書いてしまい、差が実際より大きく出ました。毎月の棚卸しで数字に慣れているつもりでも、単位をそろえる前に引き算をすると、こうした取り違えが起きます。それ以来、表の見出しには「月」か「年」を書き添えるようにしています。

退職金を平均額で置いていた

次に、退職金の欄に平均額をそのまま書き込みました。厚生労働省の調査結果を紹介する記事によると、「令和5年就労条件総合調査」(2023年10月31日公表)で、大学卒(管理・事務・技術職、勤続35年以上)の定年退職者1人平均の退職給付額は2,037万円で、前回調査の2,173万円から減っています。退職給付制度がある企業の割合も、80.5%から74.9%に下がりました。

平均は条件のそろった人たちの数字で、私たちが受け取る額ではありません。退職金の欄は、勤め先の規程で確かめた見込み額に置き換えることにしました。

相場が下がると、積立を止めたくなった

三つ目は数字ではなく気持ちの話です。2020年3月、値下がりが続く画面を見て私たちは積立を止めかけ、夫婦で言い合いになりました。積み上げる側のお金は、途中で止めると試算の前提そのものが変わります。この経験から、まとまって入るお金と毎月積むお金は、同じ気分で動かさないよう置き場所を分けて考えています。

人生全体のプランは、どんな順番で組み立てる?

つまずきを踏まえて、私たちは次の順番に落ち着きました。

  1. 年金の見込み額を月額で書き出す(確かめ方はねんきん定期便から見込み額を確認する手順にまとめています)
  2. 老後の生活費を月額で書き、年金との差を出してから12を掛けて年額にする
  3. 差の年額に、見通す年数を掛けて総額にする
  4. 勤め先の規程で退職金の見込み額を確かめ、総額から差し引く
  5. 残った額を、新NISAとiDeCoで何年かけて積むかに割り振る

割り振るときに使う枠も確かめておきます。金融庁のページでは、新NISAは2024年1月に始まった恒久的な制度で、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円、併用して年間最大360万円まで使えるとされています。非課税で保有できる期間は無期限で、非課税保有限度額は生涯で1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)です。

iDeCoの拠出の上限は働き方で変わり、自営業者等で月6.8万円、企業年金のある会社員で月2.0万円、専業主婦・主夫で月2.3万円です。iDeCo公式サイトによると、掛金は全額が所得控除の対象で、運用益は非課税、受け取るときは年金なら公的年金等控除、一時金なら退職所得控除の対象になります。

一時金で受け取ると退職所得控除が関わるため、私たちはiDeCoの受け取り方を退職金と切り離さず、同じ表の上で考えています。受け取り方による違いは、退職金を一時金でもらうか分割でもらうかを比べた試算で整理しました。

次の年始までに、表のどこを埋める?

三つのお金を一度にそろえなくてもよい、と私たちは考えています。紙に「年金」「退職金」「新NISA・iDeCo」の三行だけの表を書き、いま分かっている数字を月額で一つだけ書き入れてみる。空欄の行が残っても構いません。その空欄が、次に確かめる場所を静かに教えてくれます。