同じ金額の退職金を受け取る二人がいても、手元での計算まで同じになるとは限りません。あなたの退職金の見込みを左右しているのは、どの数字でしょうか。
私たちは毎年1月に老後資金の目標額を見直していますが、退職金の欄だけは長くあいまいなままでした。その欄を埋めるために夫婦で試算した手順と、途中でつまずいた点を書いておきます。
退職金の見込みは、何を入れれば形になる?
内閣人事局の国家公務員の退職手当の説明では、基本額は勤続年数の区分に応じた額に俸給月額を掛けて算定され、定年か自己都合かといった退職理由でも取扱いが異なるとされています。私たちはこの形を借りて、入力を次の3つに絞りました。
- 勤続年数:退職する時点で何年勤めているか
- 給与額:計算のもとになる月の給与
- 退職事由:定年か、それ以外か
この3つを書き出すだけで、ぼんやりしていた欄に手がかりが生まれます。
私たちの試算では、年数がどこまで効いた?
次に、受け取ったあとの計算を見ました。国税庁の退職所得の計算方法では、退職所得控除額は勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。退職所得は「(収入金額−控除額)×1/2」で求めます。
ここでは仮の数字として、退職金1,800万円を勤続20年と30年で受け取る場合を並べました。
| 項目 | 勤続20年 | 勤続30年 |
|---|---|---|
| 退職金(額面) | 1,800万円 | 1,800万円 |
| 退職所得控除額 | 8,000,000円 | 15,000,000円 |
| 退職所得 | 5,000,000円 | 1,500,000円 |
同じ1,800万円でも、課税の対象になる退職所得は5,000,000円と1,500,000円に分かれました。年数は額面だけでなく、受け取ったあとの計算にも効く入力です。なお勤続5年以下の短期退職手当等では、控除後の金額のうち300万円を超える部分に1/2の計算が適用されません。
どこで手が止まった?
平均額を、自分たちの数字と取り違えかけた
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査(2024年3月1日公表)では、大卒・勤続35年以上の定年退職者1人平均退職給付額は2,037万円で、前回の平成30年調査の2,173万円から減っています(クミタテルの解説より)。私たちは最初、この2,037万円を見込みの欄にそのまま書きかけました。けれど夫は地方銀行から今の会社に移っていて、今の勤め先で何年と数えるのかを確かめないまま、平均の条件に当てはめることはできませんでした。
退職事由を「定年」で決めつけていた
3つめの入力を、私たちは当然のように定年で置いていました。退職事由で取扱いが変わる以上、途中で辞める場合も並べておかないと、見込みが一本の線になってしまいます。
3つの入力を、老後資金の表にどうつなげる?
2019年6月3日に公表された金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループ報告書では、年金のみに頼る高齢夫婦無職世帯で毎月約5万円の赤字が生じ、20年で1300万円、30年で2000万円が不足するという試算が示されました。
この規模の数字の横に置くと、退職金の見込みのずれは小さくありません。私たちは今、「定年まで勤めた場合」と「途中で辞めた場合」の2行をつくり、その差ごと老後資金の表に書き込んでいます。どちらの行を土台にするかは、家庭の働き方によって違ってよいと考えています。
退職金で不足を何年分埋められるかまで追うなら、月の不足額で割って「何年もつか」を計算する方法が続きになります。控除額の式をもう一度確かめたいときは、控除額と1/2の式で退職金がいくらになるかを試算した記事も手がかりになります。
次の見直しまでに、何を一行書き足す?
今日のうちにできるのは、勤め先の退職金の規程を開き、自分の勤続年数を何年として数えるのかをメモに一行書くことです。その一行があれば、残りの2つの入力も落ち着いて埋めていけるはずです。