約4,080。100万円を年率2%で5年間運用したとき、単利と複利のあいだに生まれる差です。5年分の収益全体から見れば、ほんのわずかな額に思えるかもしれません。

これを私たちは、「小さいけれど、止まらない差」と見ています。複利の差は、始めのうちはほとんど目立ちません。けれども期間が延びるほど、その差がまた次の差を生んでいきます。この記事では、まず複利の仕組みを確かめます。そのうえで毎月の積立をいくつかの条件で計算し、年数と利回りによって結果がどれほど変わるのかを数字で見ていきます。

30年後の金額を分けるのは、利回りだけでしょうか?

複利シミュレーションというと、「年率何%で計算するか」に目が向きがちです。私たちも、つみたてNISAを始めた2018年ごろは、利回りの数字ばかりを気にしていました。

けれども、月末の夜に食卓で口座残高を並べる「棚卸し」を7年続けるうちに、少し見方が変わってきました。結果を左右するのは、利回りと同じくらい「どれだけの期間、続けられたか」なのではないか、と感じています。

2020年3月には、値下がりに不安になって積立を止めかけ、夫婦で言い合いになったこともありました。もしあのとき止めていたら、その後の年数ぶんの複利も一緒に手放していたことになります。では、なぜ期間がそれほど効くのでしょうか。まずは仕組みから確かめていきます。

利子に利子がつくと、お金はどう育つ?

複利とは、運用で得た利子や収益を元本に加え、その後は元本だけでなく、それまでの収益にも収益が生じる仕組みです。金融庁のNISA特設ウェブサイトでは、長い期間投資を続けると複利の効果が大きくなることが説明されています。

小さな苗木と、年月をかけて育った若木が並ぶ庭の様子

単利との違いは、収益を元本に組み入れて再運用するかどうかです。単利では、何年たっても元本に対してだけ収益を計算します。知るぽると(金融広報中央委員会)の用語解説でも、利子にもまた利子がつくのが複利で、利子を元金に組み入れない単利とは区別されています。

100万円を年率2%で運用すると、単利なら5年後は110です。複利では、日本証券業協会の資料の計算例のとおり約110万4080円になり、冒頭の差が生まれます。

同じ利率なら、運用期間が長いほどこの差は広がっていきます。収益が元本に加わるたびに、次の収益を生む土台が少しずつ大きくなるからです。1年目や2年目に差が見えにくいのは、その土台がまだ小さいためです。

毎月1万円を20年、30年と続けたら、どこまで育つ?

複利シミュレーションで決める項目は、毎月の積立額、想定利回り(年率)、積立期間の3つです。金融庁のつみたてシミュレーターも、この3項目を入力して将来の運用資産額を算出する構成になっています。

毎月末に積み立てる場合、将来の金額は「毎月積立額×{(1+年率÷12)^(12×年数)-1}÷(年率÷12)」で計算できます。年率0%のときは「毎月積立額×12×年数」となり、積み立てた元本と同じ額です。

ここからは仮の条件で計算してみます。毎月末に1万円を積み立て、年率3%と5%の月次複利で運用したとします。税金・手数料・価格変動は考えません。

毎月末に1万円を積み立てた場合の試算(月次複利、税金・手数料・価格変動は考慮しない)
期間 積立元本 年率3% 年率5%
20年 240 約328万円 約411万円
30年 360 約583万円 約832万円

20年で見ると、運用収益は年率3%で約88万円、5%で約171万円です。30年に延ばすと、それぞれ約223万円、約472万円になります。

私たちが目を留めるのは、年率5%の列です。20年から30年にかけて、積立元本の増加は120ですが、運用収益は約171万円から約472万円へと3倍近くに増えています。最後の10年で、それまでの収益がさらに収益を生んでいる様子が見て取れます。

表の数字は、未来の約束になる?

ただし、この試算は将来の運用成果を保証するものではありません。利回りを一定と仮定したモデル計算であり、実際の投資では価格変動や元本割れ、手数料、税金などを別に考える必要があります。

2020年3月の私たちのように、実際の残高は一直線には増えていきません。表の数字は、条件ごとの違いを比べるための目安として受け止めています。

あなたの条件なら、どの数字から確かめる?

あなたの場合を計算するなら、3つの項目のうち「期間」から決めていく方法があります。お金を使い始めたい時期までの年数がわかれば、積立額と想定利回りを入れ替えながら、結果を幅で眺められます。

想定利回りは、3%と5%のように複数並べておくと、一つの数字に期待を寄せすぎずにすみます。積立額も、家計に無理のない金額でいくつか試せます。シミュレーターへの具体的な入力の流れは、毎月の積立額と期間から将来の金額を試算する方法にまとめています。

もう一つ、表の試算では税金を含めていませんでした。金融庁のNISA解説ページによると、2024年1月に始まった新NISAでは運用益が非課税で、非課税保有期間は無期限です。つみたて投資枠は年間120万円のため、毎月1万円(年12)の積立はその範囲に収まります。枠の全体像は新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠と非課税保有限度額の基本で整理しています。

私たちは毎年1月に老後資金の目標額を見直しています。そのときも利回りを一つに決めつけず、期間ごとに数字を並べるようにしています。計算は先の不安を消すものではなく、今の選択肢を見えるようにするものだと考えています。

複利の差は、始めた日にはほとんど見えないほど小さなものです。その小さな差を、あなたは何年かけて見守っていきたいでしょうか。