毎年1月、お正月の飾りを片づけたあとに、私たちは老後資金の目標額を見直しています。夫婦で続けている、年始の小さな行事のようなものです。ただ、見直しのメモにはいつも「年金は?」とだけ書いた空欄が残っていました。受け取る側の数字がわからないまま、準備する側の数字だけを動かしていたのです。
そこで、ねんきんネットの年金見込額試算を開いてみることにしました。画面を開く前は、老齢年金の見込額がそのまま「決まった受取額」のように出てくるものだと、漠然と思っていました。ここでは、私たちが試したときの順番と、数字の見方でつまずいた点、そのあとに整理した考え方を書いていきます。
年金の空欄は、どの画面から埋める?
最初に必要なのは利用登録です。日本年金機構の登録方法のページでは、方法が2つ示されています。
- マイナポータルと連携する(マイナンバーカードとメールアドレスを使い、ユーザIDの取得は不要)
- ユーザIDを取得する(基礎年金番号とメールアドレスで申し込み、アクセスキーがあればその場で取得。ない場合は後日郵送)
登録が済んだら、次の順に進めます。
- ねんきんネットにログインする
- 年金見込額試算の画面を開く
- 「かんたん試算」を選んで試算する
- 表示された見込額と、試算の前提を書き留める
年金見込額試算は、自分で条件を設定して、将来受け取る老齢年金の見込額を試算する機能です。75歳以上の方は利用できません。いちばん手早いのが「かんたん試算」で、2025年1月7日のお知らせによると、令和7年1月6日から試算画面と操作方法が見直され、現在と同じ条件で60歳まで加入を続ける設定が自動で入るようになっています。
私たちも夫婦それぞれで試算し、出てきた金額を目標額のメモの横に書き写しました。
表示された金額は、そのまま老後の収入?
空欄が埋まって安心しかけたところで、手が止まりました。つまずいた点は3つあります。
60歳まで今の働き方が続く前提だった
かんたん試算は、今の加入状況が60歳まで続くという条件で計算されます。夫の経理の仕事も、妻のパートも、この先ずっと同じとは限りません。表示された金額を「決まった受取額」のように読んでいたのは、この前提を見落としていたからでした。これから先、夫の働き方や妻のパートの時間が変わったときは、そのつど条件を入れ直して試算し直す必要があると、私たちは受け止めています。
月額と年額が混ざっていた
私たちの目標額は年単位で考えています。一方、年金額のお知らせは月額で示されていて、並べたときに単位がずれていました。令和8年度の年金額(2026年4月1日発表、令和8年4月分から適用)を年額に直すと、次のようになります。
| 区分 | 月額 | 年額(月額×12) |
|---|---|---|
| 老齢基礎年金(満額・1人分) | 70,608円 | 847,296円 |
| 厚生年金(夫婦2人分の標準的な年金額) | 237,279円 | 2,847,348円 |
「標準的な年金額」は目安として示されたもので、私たちの家庭の金額ではありません。自分たちの数字は、ねんきんネットの試算結果で見ることにしました。
年金額は毎年改定される
令和7年度の老齢基礎年金の満額は月額69,308円で、改定は厚生労働省が令和7年1月24日に公表していました。令和8年度は1.9%の引上げで、月額1,300円、年額にすると15,600円の差です。
日本年金機構のFAQでは、令和8年度は物価変動率(プラス3.2%)が名目手取り賃金変動率(プラス2.1%)を上回ったため賃金の率を基準にし、マクロ経済スライドによる調整(国民年金マイナス0.2%、厚生年金マイナス0.1%)を差し引いた結果だと説明されています。引き上げられた年でも、その率は物価変動率より低いことに、私たちはここで初めて気づきました。去年の1月に書き留めた見込額も、今の制度の数字とは少しずれていることを、ここまでの数字で確かめました。
来年の1月、見込額をどう読み直す?
3つのつまずきを並べてみて、私たちは見込額を「一度見たら終わりの答え」ではなく、条件を変えて比べる材料として扱うことにしました。ねんきんネットのFAQでは、試算できる内容として次の4つが挙げられています。
- 今の働き方を続けた場合の年金額
- 年金を受け取りながら働いた場合の年金額
- 受給開始年齢を変えた場合の年金額
- 国民年金保険料を追納した場合の増額分
私たちは、かんたん試算の結果を基準の一枚として残し、働き方が変わりそうなときは条件を設定し直した試算を横に並べることにしました。条件を変えるたびに前提の欄も一緒に書き写すようにしたのは、今回のつまずきがあったからです。受給開始年齢を動かすときの考え方は繰り下げ受給の増額率と損益分岐を整理した記事に、見込額から生活費との差を出す方法は年金だけで足りない金額を計算する試算ガイドに書いています。
どの条件で見るかは、ご家庭の働き方や考え方によって変わります。画面の前提を一行ずつ確かめながら、数字を一つずつ積み上げていきましょう。
書き写した紙を二つ折りにしながら、夫が「来年の1月も、この横に新しい数字を書こう」と言うと、妻は「今度は前提の欄も忘れずにね」と返しました。