毎年1月、私たちは老後資金の目標額を見直しています。お正月の飾りを片づけた週末、食卓で去年の数字に線を引き、書き直すのが恒例です。今年の見直しで話題になったのは、新NISAとiDeCoという二つの箱を、一つの計画としてどう組み合わせるかでした。私たちはまだ40代ですが、50代から積み立てを本格的に始める場合を、数年先の自分たちに重ねて試算してみました。

設定は、企業年金のない会社員が55歳から10年間積み立てるという仮のものです。同じ額を勧めるためではなく、あなたの条件に置き換えるための物差しとして並べています。

50代から始めるなら、二つの箱にはいくらまで入る?

金融庁のNISA特設ウェブサイトでは、新NISAの年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円で、併用すると最大360万円とされています。非課税で保有できる限度額は総枠1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)で、保有期間は無期限です。枠の仕組みそのものは、新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠と1,800万円の基本を整理した記事にまとめています。

iDeCoの掛金上限(月額)の引き上げ予定 iDeCoの掛金上限(月額)の引き上げ予定 単位:円 2026年12月拠出分から 現行 0 20,000 40,000 60,000 80,000 第1号被保険者 企業年金のない第2号被保険者 68,000 75,000 23,000 62,000

iDeCoの掛金上限(月額)の引き上げ予定(単位:円)
項目 現行 2026年12月拠出分から
第1号被保険者 68,000 75,000
企業年金のない第2号被保険者 23,000 62,000
出典:iDeCoの拠出限度額、加入可能年齢が引き上げられます|厚生労働省広報室/iDeCo(イデコ)をはじめる|iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会運営)

iDeCoは、原則20歳以上60歳未満の国民年金被保険者が加入でき、掛金は月5,000円から1,000円単位で決められます(iDeCo公式サイト)。上限は働き方によって異なり、自営業者など第1号被保険者の上限は、国民年金基金などとの合算で月68,000円です。

ここに大きな変化が控えています。厚生労働省広報室が2025年12月19日に発表した内容では、2026年12月拠出分(2027年1月引落分)から、第1号被保険者の上限が月68,000円から75,000円に、企業年金のない第2号被保険者は月23,000円から62,000円に引き上げられます。加入できる年齢についても、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていない人を対象に、70歳未満まで広がる予定です。企業年金のない第2号被保険者は、現行制度でもすでに65歳未満まで加入できるため、55歳から10年という私たちの設定自体は、今の制度でも組める範囲です。金額の上限だけが、改正後の数字に変わります。

10年後、入れたお金はどこまで積み上がる?

この設定では、iDeCoを改正後の上限である月62,000円、新NISAのつみたて投資枠を月5万円と置きました。毎月の合計は112,000円です。運用による増減は入れず、入れたお金だけを10年分並べると次のようになります。

積立元本の試算(運用による増減を含まない)
口座 毎月 年額 10年分の元本
iDeCo 62,000円 744,000円 7,440,000円
新NISA 50,000円 600,000円 6,000,000円
合計 112,000円 1,344,000円 13,440,000円

新NISAの10年分は総枠1,800万円のうちの6,000,000円で、枠はまだ12,000,000円残ります。一方、生命保険文化センターのページで紹介されている総務省「家計調査」2025年平均では、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の不足額は月約4.2万円です。年額にすると504,000円、20年分を重ねると10,080,000円になります。平均の数字なので、そのまま自分たちに当てはまるとは考えていません。

数字を並べたあと、私たちはどこでつまずいた?

最初のつまずきは、iDeCoの上限を一つの数字で考えていたことです。会社員でも、勤め先に企業年金があるかどうかで上限は変わります。楽天証券の制度改正の解説によると、確定給付企業年金などに加入する会社員・公務員の上限は、2024年12月から月1.2万円が月2万円に引き上げられています。夫の勤め先の制度を確かめるまで、表のどの行を使えばよいのか決められませんでした。

二つめは、上限いっぱいを前提に表をつくってしまったことです。月112,000円は、家計によってはかなり重い額です。私たちは2020年3月、相場が大きく揺れたときに積立を止めかけ、夫婦で言い合いになりました。無理のある額は、揺れた月に続かなくなりやすいと感じています。保険の見直しを先送りして払いすぎた経験もあり、積立額を増やす前に、毎月出ていく固定費を見直すことにしました。

二つの箱の役割は、どう分けて考える?

私たちが整理したのは、二つの口座を別々の商品として考えるのではなく、合計で値動きのある資産をどのくらい持つかを先に決め、それを二つの箱に振り分けるという順番です。新NISAは保有期間が無期限なので、60代以降も持ち続ける箱として考えやすいと感じました。iDeCoは改正で企業年金のない第2号被保険者の上限が広がり、50代から始める人にとって毎月入れられる額の選択肢が増えます。

  1. 勤め先の企業年金の有無を確かめ、iDeCoの上限がどれに当たるかを書き出す
  2. 今の上限と、2027年1月引落分からの上限を並べて書く
  3. 揺れた月でも続けられる毎月の合計額を、先に一つ決める
  4. 合計額をiDeCoと新NISAに振り分け、10年分の元本を計算する
  5. 平均の不足額を、自分たちの生活費と年金の見込みで計算し直す

最後の手順は、月の不足額を残りの年数で割った50代からの計算例と並べると進めやすくなります。

来年の1月、手帳にはどの数字を書く?

表を眺めたあと、上限の数字にばかり目が向いていたことに二人で気づきました。二つの箱にいくら入るかより、いくらなら10年続くかを先に書きたいと考えています。

手帳を閉じる前、妻がぽつりと言いました。「大きい数字を書くより、来年も同じ数字を書けるほうがいいね」。