20年後の食卓を、少し想像してみます。湯気の立つ器の横に、使い込んだノートが一冊置かれている。開けば、毎月いくら積み立てたかという記録が淡々と並んでいる。そのとき私たちが読み返すのは、おそらく「上限まで使えたか」ではなく、「無理なく続けられたか」のほうだろうと思います。
とはいえ、金額を決めるには器の大きさを知っておく必要があります。新NISAの上限は、年間と生涯の二つに分かれています。一つずつ確かめていきましょう。
新NISAの「上限」は、どの数字を指すのでしょうか?
新NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠という二つの枠があります。金融庁のNISA特設ウェブサイトの制度説明では、年間に投資できる額はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円、二つを併用した場合の合計は年360万円と示されています。
もう一つの上限が、生涯にわたる非課税保有限度額です。こちらは1,800万円で、そのうち成長投資枠として使えるのは1,200万円まで。反対に、つみたて投資枠だけで1,800万円のすべてを使う形も選べます。枠の全体像は新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠と1,800万円の基本でも整理しています。
| 枠 | 年間に投資できる額 | 生涯の限度額1,800万円の中での扱い |
|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 1,800万円まで使える |
| 成長投資枠 | 240万円 | 1,200万円が上限 |
| 併用した合計 | 360万円 | 合わせて1,800万円 |
出典:金融庁「NISAを知る」
枠はどう数えられ、売ったらどうなる?
この二つの上限は、どちらも簿価、つまり買ったときの金額で数えます。値上がりして評価額がふくらんでも、そのぶん枠を多く消費したことにはなりません。
持っている商品を売ったときは、売却した分の簿価相当額が非課税保有限度額に戻り、翌年以降にまた使えます。戻るのは売却代金や売ったときの時価ではなく、買ったときの金額です。
一方で、年間の枠は戻りません。政府広報オンラインの制度の解説にもあるとおり、同じ年のうちに売ってもその年に使った枠が空くことはなく、使わなかった分を翌年に繰り越すこともできません。年間の枠は、その年のうちに使うか使わないか、それだけです。
そして、投資できる期間も非課税で持てる期間も無期限です。ここが大事だと私たちは考えています。上限は「ここまで入れられる」という線であって、「ここまで入れなさい」という線ではありません。
月3万円・5万円・10万円。三つの選択肢を計算してみます
金額を考えるときは、まず家計から続けられそうな月額を置き、それを12倍して年額に換算し、年間の上限と並べる。この順番が整理しやすいです。仮に三つの選択肢を置いてみます。
| 項目 | 積立年数 |
|---|---|
| 月3万円 | 50 |
| 月5万円 | 30 |
| 月10万円 | 15 |
- 月3万円なら年36万円。1,800万円に届くまで50年
- 月5万円なら年60万円で、30年
- 月10万円なら年120万円で、15年。つみたて投資枠の年120万円とちょうど並ぶ額です
運用益も損失も手数料も、途中の増減も入れず、同じ額を積み上げただけの単純計算です。それでも、年数の差はこれだけ開きます。利回りを置いた場合の見え方は積立投資シミュレーションのやり方で別に試算しています。
この年数を見て、短いほうが良いように感じるかもしれません。ただ、枠を早く埋めることと、20年後の食卓に何かが残っていることは、同じ意味ではありません。
私たちは、どの額で続けてきたのでしょうか
私たちはつみたてNISAを制度の始まった2018年から続けていて、毎年1月に老後資金の目標額を見直しています。実際に積み立てている月額は、この記事では並べないでおきます。数字より先に、私たちが身にしみたのは続けることの難しさです。
2020年3月には、積立を止めかけて夫婦で言い合いになったことがあります。結局止めずに済んだのは、毎月の額が家計を圧迫しすぎていなかったからだと、今は思っています。保険の見直しを先送りして払いすぎたこともあり、家計の整え方に正解があったわけではありません。
ですから、どの額が正しいかを私たちの数字で決めて、あなたに当てはめるつもりはありません。収入の形も家族の予定も違えば、続けられる額も変わります。上限は共通の数字ですが、月額は共通になりようがないのだと思います。
金額を決める前に、何を分けておきますか?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の資料では、まず収入と支出を把握したうえで、日常生活に必要なお金、近く使う予定のあるお金、当面使う予定のないお金に分ける考え方が示されています。投資にはリスクがあることを理解したうえで、当面使う予定のないお金で行う、という順番です。
上限から引き算して月額を決めるのではなく、仕分けたあとに残ったお金から足し算していく。私たちが毎年1月にやっているのも、結局この足し算のやり直しです。
急いで決めなくてもいい数字かもしれません
年間の枠は、その年のうちに使うか使わないかで区切られます。一方で、投資できる期間も非課税で持てる期間も無期限です。二つを分けて考えると、今夜のうちにすべての月額を決めきる必要はないのかもしれません。
ただ、今年の未使用枠は翌年へ繰り越せないという点は、手元に置いておきたいところです。毎年1月に目標額を見直すとき、今年の枠をどこまで使ったかを一行だけ書き添えるという見直し方もあると思います。上限まで使うために家計へ無理をさせる必要はありません。
20年後の食卓に何を置いておきたいか。その問いの答えは、一晩では出ないかもしれません。また考えましょう。