年が明けると、私たちは食卓で老後資金の目標額を見直します。毎年1月の恒例です。ある年始、妻がノートを閉じて「目標額はわかった。でも、株と債券をどのくらいの割合で持つのが理想なの?」と言いました。預金・債券・株式など性質の異なる資産を、目的に合わせて組み合わせる。資産配分の理想を、その夜から夫婦で考え始めました。

公的な比率を借りたら、うちの数字はどう見える?

最初に手に取ったのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオです。GPIFのページでは、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式を25%ずつとしています。債券50%・株式50%という形です。2026年8月に公表された速報を見ると、2026年6月末の実績も目安の近くにありました。

GPIFの基本ポートフォリオと2026年6月末の実績
資産 基本ポートフォリオ 2026年6月末の実績
国内債券 25% 25.59%
外国債券 25% 24.60%
国内株式 25% 24.48%
外国株式 25% 25.33%
債券合計 50% 50.19%
株式合計 50% 49.81%

出典:GPIF「2026年度の運用状況」

私たちはこの比率を、仮に金融資産が1,000万円あるとして当てはめてみました。4つの資産に250万円ずつ、株式部分は合計500万円です。数字の上では、きれいに収まりました。

どこで、私たちの手は止まった?

一つ目は、比率の目的です。GPIFの25%ずつは、年金積立金について実質的な運用利回り1.9%を最低限のリスクで確保するための配分です。私たちの年代や家計、運用できる年数から導いた比率ではありません。

二つ目は、値下がりへの気持ちです。先の例で株式部分が2割下がれば、100万円減ります。2020年3月、私たちは積立を止めかけて言い合いになりました。紙の上の配分と、実際に耐えられる振れ幅は別のものだと、あのとき知りました。

金融庁の資料では、リスクを利益や損失の不確実性、つまり運用成果の振れ幅として説明しています。値動きの異なる複数の資産や地域に分けると、全体の変動を抑える効果が期待できます。ただ、損失そのものがなくなる仕組みではありません。

比率を決める前に、何を確かめる?

金融庁のコラムでは、資産配分を決めるまでの手順が示されています。私たちはそれを、食卓で使いやすい順に並べ直しました。

  1. 将来の資金計画をキャッシュフロー表にまとめ、老後までに必要な収益率を確かめる
  2. 収入・支出のシナリオを複数用意し、インフレも踏まえて試算する
  3. どこまでの損失なら続けられるか、リスク許容度を夫婦で話し合う
  4. そのうえで資産配分を作り、具体的な商品と利用する制度を選ぶ

年齢だけで比率を決めず、家計の見通しから順に積み上げる流れです。制度は最後の段階で確かめます。NISAは年間最大360万円、非課税保有限度額1,800万円ですが、この上限は投資する金額や理想の配分を示すものではありません。枠の仕組みは新NISAのつみたて投資枠・成長投資枠と非課税保有限度額の基本で整理しています。

一度決めた配分は、いつ見直す?

収入や支出、家族構成、お金を使う時期、リスク許容度、制度や市場環境。このどれかが変われば、配分を見直すきっかけになります。私たちは年始の見直しに加えて、月末の棚卸しで残高を並べるときに、比率がどう動いたかも眺めるようになりました。資産や地域の分け方については、4つの分散でリスクを減らす方法を考えた記事にもまとめています。

あの年始の話し合いの終わりに、夫がぽつりと言いました。「理想の比率は、どこかで見つけるものじゃなくて、うちの数字から作っていくものなんだね」。