いま毎月積み立てている金額を、そのまま30年続けたら、手元にはいくら残るでしょうか。おおよその見当はついても、紙に書いた数字として持っている方は、そう多くないかもしれません。私たちは2018年からつみたてNISAを続けていますが、将来額は条件を置かなければ見えません。インデックス投資のシミュレーションは、その「先の金額」を、三つの入力だけで形にしてくれる道具です。使い方と、老後資金の目安との並べ方を、一つずつ積み上げていきましょう。
30年後の残高を、あなたは何で見積もっていますか
「老後資金は足りるでしょうか」という問いは、そのままでは計算できません。金額として扱える形にするには、問いを二つに分ける必要があります。一つは、いまの積立をこのまま続けたら将来いくらになるか。もう一つは、将来いくら必要になるか。前者を出すのがシミュレーション、後者を出すのが生活費の見積もりです。二つの数字が同じ紙に並んで、はじめて差が見えます。
シミュレーションは、何を計算しているのでしょうか
インデックス投資の中心にあるのはインデックスファンドです。資産運用業協会の用語集では、あらかじめ定めた指数に連動することを目標に運用するファンドと説明されています。日経平均株価やTOPIX、S&P500といった指数と基準価格が同じ値動きをすることを目指すもので、一般にアクティブファンドより信託報酬が低いことが多い、とも記されています。
将来額の計算そのものは、金融庁のページにある「つみたてシミュレーター」で試せます。入力するのは、毎月の積立金額、想定利回り(年率)、積立期間の三つだけです。令和7年9月には、計算ロジックが精緻化のために一部修正されています。出てくるのは目安であって、将来の成果を予測したり保証したりするものではなく、特定の商品を勧めるものでもない、と注意書きが添えられています。
月3万円と月5万円では、将来の金額はどう変わる?
三つの入力のうち、利回りを抜いた部分、つまり自分が払い込む元本だけは、掛け算で先に出せます。月3万円を20年なら720万円、月5万円を20年なら1,200万円、月5万円を30年なら1,800万円です。これらは積み立てた累計の払込額であり、将来の評価額や最低残高を示すものではありません。実際の評価額は、値動きや手数料などで元本を下回ることもあります。
| 項目 | 積立元本 |
|---|---|
| 月3万円×20年 | 720 |
| 月5万円×20年 | 1,200 |
| 月5万円×30年 | 1,800 |
ここに想定利回りを仮に一つ置くと、将来の評価額の目安が見えてきます。これは比較のための仮の数字で、将来の成果を保証するものではありません。年率3%と5%で20年間運用できたと仮定すると、将来額は次のようになります。
| 条件 | 積立元本 | 年率3%の仮定 | 年率5%の仮定 |
|---|---|---|---|
| 月3万円 | 720万円 | 運用益265万円で将来額985万円 | 運用益513万円で将来額1,233万円 |
| 月5万円 | 1,200万円 | 運用益442万円で将来額1,642万円 | 運用益855万円で将来額2,055万円 |
元本と運用益を分けて見ると、想定する利回りによって運用益の幅が大きく変わることがわかります。想定利回りによって試算結果は大きく変わるため、5%の結果だけを予定額として扱わず、3%と5%のように複数の仮定を並べて確認します。
月5万円を30年続けた場合の元本1,800万円には、見覚えがあるかもしれません。新NISAの制度概要では、非課税保有限度額は合計1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)、つみたて投資枠の年間上限は120万円、月あたりにすると10万円です。月5万円を30年続けると、元本だけで総枠にちょうど届きます。非課税保有期間は無期限化され、制度自体も恒久化されているため、枠を何年で埋めるかは選べる範囲にあります。枠の数え方は年360万円と1,800万円の上限を月3万・5万・10万円で計算した記事にまとめています。
老後の暮らしと並べたとき、足りないのはどの数字?
積み上がる側の数字が出たら、使う側の数字を隣に置きます。生命保険文化センターの2025年度の調査では、夫婦2人の老後生活費の目安が次のように示されています。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 最低日常生活費 | 23.9万円 |
| ゆとりある老後生活費 | 39.1万円 |
| うち上乗せ額 | 15.2万円 |
出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2025年度)老後の生活費
上乗せ額の15.2万円を単純に25年分としてみると、182.4万円×25年で4,560万円という参考額になります。ただしこれは、調査の回答者平均どうしの差を機械的に伸ばしただけの数字で、どの世帯にもそのまま当てはまる不足額ではありません。実際の不足額は、自分たちの生活費の見積もりから、年金などの見込み収入を引いて出すものです。その不足額と、積立シミュレーションで出した将来額とを同じ紙に並べたとき、どちらが大きいかが見えてきます。必要額の側を自分の世帯で出したいときは、老後資金の不足額を3つの物差しで計算する記事が手がかりになるかもしれません。
私たちが一度つまずいたのは、想定利回りの置き方でした
2020年3月、評価額が下がった月に、積立を止めるかどうかで夫婦で言い合いになりました。想定利回りは入力欄の一つであり、そこから出る金額は予定額ではありません。この記事では比較のため、年率3%と5%の二通りを同じ期間で計算して並べます。年率を変えて並べる試算は毎月1万円を年率3%・5%で20年・30年続けた場合の記事でも扱っています。

あなたなら、三つの欄に何を書き入れますか
手順にすると三つです。第一に、証券口座の設定画面か引き落としの記録から、いま毎月積み立てている額をそのまま書き出します。第二に、使い始めたい年齢から今の年齢を引いて、積立期間の年数を出します。第三に、その二つを入力欄に入れ、想定利回りを低めと中くらいの二通りで計算し、出た金額を横に並べて書きます。最後に、老後の生活費の見積もりから年金などの見込みを引いた額を、その下に置きます。
紙の一番下に残るのは、将来額と不足額との差です。来月の積立額を動かす前に、まずその一行を書いてみる。そこに並んだ数字を、あなたはどう読むでしょうか。