毎年1月、お正月の片付けが終わったころに、私たちは老後資金の目標額を見直しています。鏡餅を下げた食卓に積立口座の残高を書いた紙を置き、「今年はどこを確かめようか」と話すのが恒例です。ある年の見直しで出てきたのが、「資産運用でリスクを減らす方法は、結局どう考えればいいのだろう」という問いでした。

分散投資という言葉は知っていても、何をどう分けているのかを言葉にしようとすると、意外と手が止まります。ここでは、私たちが紙の上で試した計算と、そこでつまずいた点、そのあとに整理した見方を順にたどっていきます。

毎月の積立を4つに分けたら、何が見える?

分けるイメージをつかむため、仮に毎月3万円を積み立てる家庭を置いてみます(私たち自身の積立額ではなく、考えるための例です)。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のページでは、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式の4資産に25%ずつ配分した例が紹介されています。この配分をまねると、次のようになります。

毎月3万円を4資産に均等に分けた場合(仮の例)
項目 金額
1年間の積立額 360,000円
1資産あたりの毎月の額 7,500円
1資産あたりの1年間の額 90,000円

GPIFの説明によると、4資産に均等に分けた組み合わせは、単年ごとの収益率を比べたシミュレーションで、最も高い順位にも最も低い順位にもならなかったそうです。どの資産が1位になるかを前もって当て続けるのは難しいです。だから分けておく意味がある、という考え方です。一番にはならない代わりに、一番下にもなりません。表を眺めながら、私たちはそこに落ち着きを感じました。

金額を割っただけで、分散できたと言える?

ところが、表を作ったところで話が止まりました。金額を4等分しただけで「分散できた」と言ってよいのか、自信が持てなかったのです。

同じ国内株式の中で銘柄を増やすことと、株式と債券を組み合わせることは、同じ「分ける」でも意味が違うはずです。毎月少しずつ買う積立は、金額ではなく買う時期を分けています。表には「いくら」を書いただけで、「何を」「どこに」「いつ」は書いていませんでした。

もう一つ思い出したのが、2020年3月のことです。私たちは積立を止めかけ、夫婦で言い合いになりました。配分を決めていても、口座の数字を前にすると気持ちは揺れます。分散は配分表の中だけで終わる話ではない、と感じた出来事でした。

分けるものは、いくつある?

京葉銀行の解説記事では、分散投資を次の4つに整理しています。私たちは、つまずいた点を言葉にする手がかりにしました。

  • 銘柄の分散:同じ資産の中で、複数の銘柄に分けて投資する
  • 資産の分散:預貯金・株式・債券・不動産・金など、種類の違う資産を組み合わせる
  • 地域の分散:国内と海外、先進国と新興国などに分ける。通貨を分けることも含む
  • 時間の分散:積立投資などで、買うタイミングを複数回に分ける

全国銀行協会のページでも、資産・地域・時間の3つが、投資のリスクを抑える方法として挙げられています。先ほどの表に当てはめると、4資産への配分は「資産」と「地域」、毎月の積立は「時間」の分散にあたります。一方で、それぞれの資産の中身が何銘柄に分かれているかは、表からは読み取れませんでした。

続ける年数で、値動きの幅はどう変わる?

時間の分散について、日本証券業協会のNISAのページでは、毎月一定額を買い付けることで平均購入価格が平準化され、リスクを抑える効果が期待できると説明されています。金融庁のページでも、長期投資を続けると複利の効果で安定した収益が期待できる、とされています。

保有期間による違いは、京都銀行の解説記事が、金融庁の公表した国内外の株式・債券に分散投資した場合の収益率の分布を引いて紹介しています。

分散投資の保有期間と年率の利回りの幅
保有期間 年率の利回りの幅
5年 -8%〜14%
20年 2%〜8%

出典:京都銀行「つみたて投資枠(旧つみたてNISA)の利回りはどれくらい?」

20年でも幅がなくなるわけではありません。それでも、5年より上下の開きが狭いことに、私たちは「続けること」の重みを見ました。あの3月に積立を止めていたら、時間の分散を自分たちの手で途中で切っていたことになります。

4つの分散を、私たちはどう使っている?

つまずいたあとで、私たちは分散を4つの問いに置き換えて考えるようにしました。

  1. 何を持っているか(資産の分散)
  2. どこの国や通貨に向いているか(地域の分散)
  3. いつ買っているか(時間の分散)
  4. 一つの資産の中が、どれだけの銘柄に分かれているか(銘柄の分散)

金融庁のNISA特設ウェブサイトでは、長期・積立・分散を資産形成の基本とし、値動きの異なる複数の資産に分けることで価格変動を抑え、安定的な運用を目指せると説明しています。「抑える」「目指す」という言葉のとおり、分散は値下がりをなくす方法ではありません。私たちは、4つの問いのどれかに答えられないとき、そこを次に確かめる場所だと考えています。どんな割合が合うかは、お金を使う時期や家計によって変わるため、あなたの条件で一つずつ確かめていく形でよいのだと思います。

資産・地域・時間の3つを年代の視点から見た内容は40代・50代からの資産運用とリスク管理を3つの分散で考える記事に、毎月の額と期間から将来の金額を出す手順は積立投資シミュレーションのやり方にまとめています。

その年の見直しの終わり、夫は紙の端に書いた4つの問いを指でなぞりながら言いました。「当てにいくより、外れても慌てない形にしておこう」。