2,821万口座。金融庁が2026年7月3日に公表した調査で示された、2025年12月末時点のNISA口座数です。累計の買付額は71兆円にのぼります。これを私たちはこう見ています。始めるところまでは多くの人が進んだけれど、続けた先に何が残るのかを自分の数字で確かめたかどうかは、また別の話なのだろうと。

資産形成シミュレーションは、何を確かめるものでしょうか?

資産形成シミュレーションとは、毎月の積立額、想定利回り(年率)、積立期間といった条件を入力し、将来の運用資産額を概算する方法です。金融庁のつみたてシミュレーターでは、毎月の積立金額、想定利回り、積立期間の三つを入れると、将来の運用資産額が出ます。入力するのは、それだけです。

つまり確かめているのは「将来こうなる」という予測ではなく、「この条件が続いたら計算上はこうなる」という一本の線です。

数字は、どんな仕組みで積み上がる?

中身は二つに分かれます。一つは元本です。積立投資は、あらかじめ決まった金額を続けて投資する方法だと金融庁は説明しています。毎月の額に月数を掛けた、自分で積んだ分がこれにあたります。

もう一つが運用益で、ここに複利が関わります。複利は、運用で得た収益を元本に加え、その合計を次の運用対象にする計算です。金融広報中央委員会の積立合計額シミュレーションのページでは、利息を元金に組み入れないのが単利、組み入れるのが複利と説明されています。期間が長いほど、この差は開いていきます。

毎月3万円を20年続けたら、何が残る?

条件を一つ置いてみます。毎月3万円を20年間、年率3%で積み立てた場合です。元本は7,200,000円、複利で計算した将来額は約980万円、その差である運用益は約260万円になります。

毎月3万円・年率3%・20年の内訳
元本 720万円
運用益 約260万円
合計 約980万円

年率3%が毎月一定で続くと仮定した概算で、実際の成果を保証するものではありません。

この金額を勧めているわけではありません。ただ、元本と運用益を分けて見ることは、どの条件でも役に立ちます。720万円は自分で積んだ分、約260万円は時間に働いてもらった分。内訳が見えると、相場が下がったときに何が減っているのかを考えやすくなります。

私たちは2020年3月、積立を止めかけて夫婦で言い合いになりました。あのとき見ていたのは、目先の評価額だけでした。

あなたの条件なら、どこから入力する?

手順にすると、次の順番になります。

  1. 目標額か積立期間か、どちらかを先に決める
  2. 家計を見て、毎月無理なく続けられる額を確認する
  3. 想定利回りを一つに絞らず、低めと中くらいで二、三通り置く
  4. シミュレーターに条件を入力する
  5. 結果を元本と運用益に分けて書き出す
  6. 相場や家計、家族の状況が変わったときに入力し直す

NISAを使うなら、枠も並べて見ておけます。現行制度の年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、併用で360万円。非課税保有限度額は総額1,800万円で、うち成長投資枠は1,200万円が上限です。毎月3万円なら年36万円で、つみたて投資枠に収まります。利回りごとの見え方は複利シミュレーションで見る長期積立、入力の流れは積立投資シミュレーションのやり方で扱っています。

出てきた数字を、どこまで信じる?

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2026年6月版の資料では、リスクを運用成果の振れ幅とし、リスクとリターンは原則として比例するため、ローリスク・ハイリターンの商品はないとしています。高いリターンが期待される運用ほど、一般にリスクも高くなります。シミュレーションの想定利回りは一定の仮定であり、実際の値動きの振れ幅までは表しません。

金融庁は、長期投資では複利の効果が大きくなり、分散投資では値動きの異なる資産に分けることで価格変動をある程度抑えられると説明しています。数字を動かす前に、長期・積立・分散がそろっているかを見る。私たちはその順で確かめてきました。

月末の夜、食卓に口座の残高を並べる習慣を7年続けています。そこに並ぶのは今日の数字ですが、シミュレーションに並ぶのは20年先の数字です。あなたが今日、毎月の額と期間と利回りの欄に置くとしたら、それはどんな数字でしょうか。