年が明けて最初の週末、私たちは毎年、食卓で老後資金の目標額を見直しています。ある年の見直しで、「退職金って、結局いくらもらえる計算なんだろう」という話になりました。目標額に組み込んでいる数字なのに、どう計算された額なのか、二人とも説明できなかったのです。
そこで、統計の目安と税の計算式を使って、実際に手を動かしてみました。その試算と、途中でつまずいた点、あとから整理した考え方をまとめます。
同じくらい勤めた人は、どのくらい受け取っている?
厚生労働省が2023年10月31日に公表した令和5年就労条件総合調査では、大卒の定年退職者1人平均の退職給付額は、勤続35年以上で2,037万円でした。前回2018年調査の2,173万円からは下がっています。高卒・勤続35年以上では1,909万円です。
| 項目 | 大卒・定年退職者 |
|---|---|
| 勤続20〜24年 | 1,021 |
| 勤続25〜29年 | 1,559 |
| 勤続30〜34年 | 1,891 |
| 勤続35年以上 | 2,037 |
勤続年数が短くなるほど、目安の額も小さくなります。一方で、退職給付制度がある企業は全体の74.9%で、前回の80.5%から低下しました。30〜99人規模では70.1%です。まず勤め先に制度があるかどうかが、計算の入り口になります。
私たちの試算は、どんな式で進めた?
国税庁のページでは、退職所得の金額を「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で計算すると説明されています。退職所得には、会社の退職手当のほか、iDeCoなど確定拠出年金の一時金も含まれます。なお、勤続5年以下の役員等が受け取る特定役員退職手当等には、1/2は適用されません。
退職所得控除額は、国税庁の「退職金と税」によると、勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。
仮の数字ですが、勤続35年で2,037万円を受け取る場合を、私たちは次のように書き出しました。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 退職所得控除額 | 800万円+70万円×(35年−20年) | 1,850万円 |
| 控除後の金額 | 2,037万円−控除額 | 187万円 |
| 退職所得の金額 | 控除後の金額×1/2 | 93.5万円 |
2,000万円を超える額でも、式に通すと退職所得の金額は93.5万円になりました。
計算のどこでつまずいた?
一つめは、勤続年数の数え方です。1年未満の端数は1年として数えるため、34年と数か月なら35年で計算します。私たちは最初に端数を切り捨ててしまい、控除額を70万円少なく見積もっていました。
二つめは、出てきた93.5万円を「受け取る額」と取り違えたことです。退職所得の金額は税を考えるための数字で、振り込まれる額ではありません。税前の額と手取りの額は、別の行に書き分けることにしました。
三つめは、私たちが夫婦ともiDeCoに加入していることです。国税庁の別のページでは、会社の退職金とiDeCoなどの一時金を両方受け取るとき、受け取る時期によって控除額を調整すると説明されています。たとえば前年以前19年内に退職金を受け取り、その年にiDeCoの一時金を受け取る場合は、勤続期間の重なる分が差し引かれます。控除を二度まるごと使える前提で考えていたので、ここは書き直しました。
金額の輪郭が見えたら、何から確かめる?
つまずきを経て、私たちは次の順で確かめるようにしています。
- 就業規則を開き、退職金の計算方式を確かめる。基本給に連動する方式、勤続年数別の基準額に等級係数を掛ける方式、勤続年数や役職・評価をポイントで積み上げる方式などがあります。
- 勤続年数を端数込みで数え、控除額と退職所得の金額を書き出す。
- 税前と手取りを分け、iDeCoの一時金を受け取る時期も同じ紙に並べる。
受け取った後の置き方も、この紙の横で考えています。金融庁のNISA特設サイトでは、新NISAの年間投資枠はつみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円を合わせて年360万円、非課税保有限度額は総枠1,800万円とされています。まとまった退職金を一度に入れられる枠ではないため、何年に分けるかは家庭ごとの判断です。私たちは一括投資と毎月積立の比べ方を整理した記事や、一時金と年金形式の受け取り方を税制で比べた記事を見返しながら、結論を急がないことにしています。
次に就業規則を手に取る機会があれば、退職金の計算方式が書かれた一行に印をつけてみてください。その一行と勤続年数がそろえば、式に数字を入れるところから始められます。